2022年12月
社会経済史学会代表理事
岡崎哲二
2021年1月に前任の馬場哲代表理事の後をうけて代表理事に就任してから2年が経過し、2023年1月から引き続き3年間、代表理事を務めることになりました。今後とも社会経済史学会の活動と発展のために微力を尽くす所存です。引き続きよろしくお願い致します。
社会経済史学会は、イギリスのEconomic History Societyに遅れること4年、アメリカのEconomic History Associationに先立つこと10年の1930年に設立されました。現在、1,300名以上の会員を擁し、会員数でも英米の両学会に匹敵する規模を持っています。このような厚い研究者層と長い歴史に裏付けられた研究蓄積を基礎に、経済史は社会科学・人文学の中で、世界の研究コミュニティーにおける日本のプレゼンスが高い研究分野となっています。
2015年に京都でInternational Economic History Association (IEHA)が主催する世界経済史会議(WEHC)が開催されたのは、そのことを示す出来事の一つといえるでしょう。また近年ではEconomic History Review, Journal of Economic HistoryやExplorations in Economic Historyといった経済史分野の主要な英文誌に日本人の研究者による論文が掲載されることもまれではなくなりました。
これは言うまでもなくたいへん喜ばしいことです。しかし反面で本学会の機関誌『社会経済史学』がこれらの英文誌との国際競争に直面するようになったことを意味します。こうした国際競争は自然科学を含めて日本の多くの学会誌が直面してきたところですが、私はこれをむしろ好機として前向きに捉えたいと思います。経済史については、読者層を異にする邦文誌の論文と英文誌の論文では、テーマや、同じテーマについても書くべきコンテンツが同じではありません。英文誌と競争しながら、邦文誌であることの強みを生かして、『社会経済史学』の学会誌としての質をさらに高めて行くことができればと思います。そしてそのことに資する『社会経済史学』の改革も進んでいます。2022年1月、編集委員会からの提案に基づいて投稿規定が改定され、「論説」、「研究ノート」という投稿論文の区分が明確化され、研究ノートには学界展望、書評論文、史料紹介が含まれることが明記されました。論説に加えてこれらのタイプの論文の投稿と掲載が増える等、その効果はすでに現れてきています。
さらに、『社会経済史学』に投稿、掲載される論文の質を高めるためには、研究者の間で活発に意見や情報の交換が行われることが重要です。本学会は年次大会のほか、次世代研究者育成ワークショップ(Next Tide Workshop)を開催してそうした活動のプラットフォームを提供してきました。こうした機能を引き続き担って行きたいと思います。年次大会は新型コロナウィルス感染症のため2020年から3年続けてオンライン開催となっていましたが、2023年は九州大学と西南学院大学のご協力により対面開催ができる見通しとなっています。コロナ禍の下での経験は、新しい情報技術の有用性とともに、対面でのコミュニケーションの重要性を私たちに認識させてくれました。引き続きリモート・コミュニケーションの利便性を活用しつつ、対面でのコミュニケーションの機会を増やして行きたいと思います。
2022年には会員管理のシステムについても大きな変化がありました。ウェブ上の会員管理システム「SMOOSY」を導入したことにより、会員の皆さまがそれぞれご自分の所属先、住所や会費支払い状況等をウェブ上でご確認いただけるようになりました。この改革は学会事務の効率化にも大きく寄与するものです。
経済史は、確固としたディシプリンを持つ社会科学と人文学の2つの分野、経済学と歴史学に基礎を置いた、非常に豊かで奥の深い研究分野です。経済史研究の発展を支えることが社会経済史学会の役割であると考えます。この役割がよりよく発揮できるよう、常任理事・理事・幹事・事務局の方々とともに努力する所存です。会員の皆さまのご協力をお願い申し上げます。